大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪高等裁判所 昭和36年(う)1019号 判決

主文

被告人奥田佐一、同阪下治郎、同朝田利春、同藤本道造の本件控訴はいずれも棄却する。

原判決中被告人文野富造に関する部分を破棄する。被告人文野富造を懲役六月に処する。

この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

≪訴訟費用負担の裁判省略≫

理由

弁護人佐伯千仭、同井戸田侃の控訴趣意第三点、法令の解釈、適用を誤つた違法があるとの論旨について。

案ずるに、公職選挙法第二二一条第三項にいう「公職の候補者」とは、同法の規定にもとずく正式の立候補届出または推薦届出により候補者としての法律上の地位を有するに至つた者をいうのであつて、未だ正式の届出をしない、いわゆる「立候補しようとする特定人」を包含しないと解すべきであり、(昭和三五年二月二三日最高裁判所第三小法廷判決、刑集一四巻二号一七〇頁、同年一二月二三日最高裁判所第二小法廷判決、刑集一四巻一四号二二二一頁)同条項の選挙運動を総括主宰した者とは同法第一二九条に定められた選挙運動期間中即ち、候補者の立候補届出後または推薦届出後にその選挙運動を総括主宰した者の謂であつて、立候補届出前には同条項にいう総括主宰者たる身分はないと解するのが相当である(昭和三六年二月一七日高松高等裁判所判決、高裁判例集一四巻一号二二頁参照)。しかるに、原判決挙示の証拠によれば、高橋一吉が立候補届出をしたのは昭和三四年四月八日であることが明らかであるのに、原判決が被告人文野富造の同月四日頃の原判示第一(一)、第二の各所為について公職選挙法第二二一条第三項を適用処断したのは法令の解釈適用を誤つた違法があつてその誤が判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、論旨は理由がある。

≪その余の判決理由は省略する≫。

(裁判長裁判官 小田春雄 裁判官 石原武夫 裁判官 原田修)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例